ニューイヤーバレエコンサート2021を観て

2021年ニューイヤーバレエコンサートを観た感想を記します。

バレエについてはほとんど何も知りませんでしたが、きらきらとした世界と踊りが持つ表現の力に圧倒されました。

 

第1部「パキータ」

舞台に立ったダンサーが踊りだすと、まるでスポットライトが当たっているかのように、その登場人物の気持ちや性格が浮き上がってきました。

 

皆衣装や見た目は似ているのに、ダンサーのほんのちょっとした動作一つでも雰囲気ががらりと変わり、多彩な人物が見えてきました。音楽の上を可憐にひらひらと舞う少女や、音楽をまとう上品なお姉さんといったように。

そのしぐさは時にそっと触れると割れてしまうガラスのようにとても繊細でした。

 

ダンサーが踊るとき、舞台の上はそのダンサーの世界に変身します。さらには、ダンサーは、舞台の空間だけでなく、時間さえも自由に操っていました。踊り方によって、時に1秒がゆったりと、時にくるくると速く流れていく様子には驚きました。一番きれいな形を切り取るようにぴたっと止まった瞬間には、思わず息をのんでしまいました。

 

第2部「Contact」「ソワレ・ド・バレエ」「カンパネラ」

バレエの表現力に一気に惹きつけられました。

「Contact」

 淡いピンク色の気持ちと黒い気持ち(男女)が、時の流れの中で曖昧にふれあって、ゆらゆらと流れていくようでした。どこへ向かっていくのかもわからなくて、一瞬触れ合ったかな、と思うとまた離れてしまう。その中で、最後に幸せが訪れたと思ったらその幸せがふっとすり抜けてしまう。その様子がとても切なかったです。

現実もこの演目と同様に残酷で切ないもので、音楽や芸術や愛や色々なものによってもたらされる一瞬の幻想のきらめきによって人間は生きてるのかなあ、とも思いました。

 

「ソワレ・ド・バレエ」

Contactとは打って変わって、幸せに満ち溢れたやさしい世界でした。

星のきらめきと涼しい夜風の中を、ふわふわと可憐に舞う女性の姿が心に残っています。踊りがふとゆっくりとした動作になるとき、つい目を奪われてしまいました。

 

「カンパネラ」

身体表現の凄さを感じました。言葉ではなんとも表現できない自分の中の感情を、感じたことをこうやって踊りで表現できるのか!と衝撃的でした。音と身体の世界で、音から感じ取った、言葉になる前の生の感覚を身体が表現していました。それがとてもとても面白かったです。そして、舞台装置が少なく世界観が固定されていない分、沢山想像の余地があったため、色々な事を想像して考えながら楽しむことができました。

 

第3部「ペンギン・カフェ

ペンギン・カフェ」は、確かに一見可愛らしいけれども裏に強い主張を感じる作品でした。第2部と比較すると、第2部は言葉にできない感覚のための踊り、第3部は言葉(主張)を届けるための踊りという印象でした。くるみ割り人形のような作品だけを観ていては気づかない、バレエというものが表現する対象の多様さを感じました。

 

ペンギン・カフェ」で出てくる踊り自体は、神聖であったり、無邪気であったり、にぎやかだったりして、多様な動物が自由に生きようとしている姿が印象に残りました。

最後のシーンを観ながら、現実世界では、果たしてノアの箱舟は訪れてくれるのだろうか...といったことを考えていました。

 

どの演目もかけがえのない瞬間を私の人生にもたらしてくれました。

ライブ配信という形で公演を実現してくださった関係者の皆様、ダンサーの方々、オーケストラの方々に感謝しています。